兵庫労連

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4月から何が変わった?労働法制学習会を開催!

赤いTシャツ

 5月25日(土)に新長田勤労市民センターで、全労連 黒沢 幸一事務局次長をお招きし、4月から施行されている新36協定・労働法制の学習会を行いました。赤いTシャツとは、黒沢事務局次長のトレードマーク。上げろ最賃1500円、いつ、いかなる時でもこのTシャツを着用する姿はまさに最賃上げろと闘う勲章。そんな黒沢事務局次長に、表題について市民向けの学習会の開催の提案を含めて講義していただきました。

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質問をホワイトボードに書き出して答える黒沢事務局次長


市民講座に向けて

 全労連では、4月から施行された働き方改革について、市民の方々に向けた講座を開くことも提言されています。5年無期転換雇用の話題の時に北海道では市民講座を開講しています。労働法制の改正は市民の方々が理解するには難しい。しかし、知らなければ必ず損をする。そういったことを事前に防ぐために取り組まれている内容です。市民講座をきっかけに組合に加入された方もいるとのことでした。

 今回の学習会の内容についても、市民講座向けのパワーポイントとなっており、労働組合の基礎から、改めて学習することができました。4月から始まった働き方改革の中でも、新36協定については非常に大切な部分です。悪法は入れず、活用できる部分を最大限に活用し、至らないところは労働組合の力で改善させる。この言葉を胸に取り組まなければいけません。

新36協定とは?

日本の労働は1日8時間 週40時間が原則で、これは労働組合の先人たちが勝ち取ってきた権利でもあります。これは、労働基準法 第32条「労働時間」に定められており、本来であればこの時間以上に労働させてはいけないことになっています。

 では、なぜ残業という定義があるのか?それが36協定という制度です。36協定とは、労働基準法 第36条に則った協定のことです。36条は「時間外及び休日の労働」について定めたものです。みなさんは普段仕事をしている中で残業をすることはありますか?残業代は出ていますか?この第36条に則って協定を結ぶことで、1日8時間 週40時間を超える労働ができるようになっているのです。逆に言うと、36協定を結んでいないのに、残業をさせることは『違法である』ということです。この36協定を結んでも、時間外労働の上限は今までは大臣告示によって基準が設けられていました。しかし、これは罰則による強制力はありません。さらには、36協定の中にも「特別条項」というものが存在し、これを締結すれば上限無く時間外労働をさせることができる。というものでした。この36協定は、企業(使用者)が労働者(労働者代表 or 労働組合)に協定の提案をし、協議を経て締結するもので、企業が独自に作成し適応することはできません。

 新36協定ではどうなったか?4月の改定で、企業は新たに36協定を結び直さなければいけなくなりました。ポイントを整理します。

時間外労働の上限は、原則として月45時間・年間360時間となり、臨時的な特   別の事情がなければ、これをことは超えるできない。

・臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働:年間720時間(月平均60時間)、時間外労働+休日労働:月100時間未満、2~6ヶ月平均80時間以内とする必要がある。→時間外労働44時間、休日労働56時間となれば、月の合計が100時間を超えるため違法である。

・原則である月45時間を超えることができるのは年6ヶ月まで。(特別条項が必要)

・法違反の有無は「所定外労働時間」(会社が決める労働時間)ではなく、「法定外労働時間」(1日8時間 週40時間)の超過時間で判断される。

・今までは大臣告示にとどまり、罰則はなかったが、今回からは罰則付きで法律に規定された。(6ヶ月以下の懲役または、30万円以下の罰金)

 以上が簡潔なポイントです。みなさんは内容を知って、それでもって残業をしていますか?さらに言えば「労働安全衛生法」も改定されており、企業(使用者)は労働者の労働時間の管理・把握もしなければいけなくなっています。これは①1日、一ヶ月、一年単位での管理 ②休日労働の回数・時間の管理 ③特別条項の回数の管理 ④毎月の時間外と休日労働が100時間未満に管理 ⑤前2~5ヶ月の合算して、月数×80時間を超えない管理 をしなければいけません。

 長時間労働をしっかり是正できる内容です。が、しかし、これらを真に是正するためには、協定を合意する前に、労働者代表もしくは労働組合がしっかり内容を理解して合意しなければいけません。「結び直さないと残業できず違法になっちゃうからはんこ頂戴」→「うん、わかった(ポン)」なんてことをすると、全く効力のない協定書になってしまいます。

 さらに言えば、みなさんの職場は本当にこの36協定が必要な職場ですか?残業しなければ会社が潰れてしまいますか?この36協定は労働者側に締結する義務はありません。拒否できます。この36協定の結び直しはチャンスです。36協定の合意を交渉のカードに、業務改善を団体交渉し、長時間労働を是正させることもできます。一番大事なのは、残業上限を規制することで残業が減る→今まで企業が払っていた残業代を原資に賃上げ(基本給アップ(ベースアップ))させる、人員増させるなどの交渉ができます。強い交渉権には、労働者のことをしっかり考えてくれる、信頼できる労働者代表 or 会社全体の職員数の過半数が組合員である過半数労働組合が必要です。

有給休暇についても触れておきます

 最近の労働相談で時々聞くのが有給休暇についてです。有給休暇は入社後6ヶ月継続勤務し、所定労働日数の8割以上出勤した労働者に対して10日間付与されます。これは必ずで、法律で定められていることであり、大企業・中小企業など全く関係ありません。さらに言えば、有給休暇は正社員の物ではなく、パート・アルバイト・嘱託社員でも必ず権利が発生し、週30時間以上働けばパート等の場合には正社員と同じ日数が付与されます。30時間未満の人でも、その働く日数に応じて付与されます。

 新しい年次有給休暇制度で変わった部分は1つだけです。これは、年10日以上の有給休暇を付与された労働者に対して、一年の間に5日間の年休を取得させなければならないということです。これは企業(使用者)に課せられた義務です。有給休暇は労働者が指定する日(時季指定権)が原則です。有給休暇取得日を企業(使用者)が指定する場合は「事業の正常な運営を妨げる場合のみ」に限定され、なぜ指定するのか理由の開示を求めることもできます。

なぜ罰則まで付けて残業規制をしたのか?

電通の新入女子社員「睡眠2時間」「月130時間の残業」2015年12月に過労死

新人看護師「残業月100時間越え(数ヶ月続く)」2012年12月に過労自死(自殺)

 これらはほんの氷山の一角でしかありませんが、それぞれ入職10ヶ月で亡くなられています。みなさんはこの死をどう感じますか?私も月100時間を超える残業を経験したことがあります。どれだけ意思を強くもっても同様の状態がほんの2・3ヶ月続くと死を意識し始めます。どんだけ意思を強くもってもです。長時間労働は精神を阻み、メンタルヘルスに影響を及ぼします。

 また、長時間労働で人体に影響を及ぼす基準があり、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」という厚生労働省労働基準局通達において、週40時間を超える労働時間が月45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まるとされています。ストレスは血圧に影響を与え、高血圧は動脈硬化を促進しそれにより急性心筋梗塞や心筋が分厚くなり充分に血液を全身に運べなくなったり、そうなると脳の血流にも影響を与えます。さらには思考にも変化を与え、イライラしやすくなったり、人にあたり、暴力をふるう→パワーハラスメントやメンタルハラスメントに繋がるなどの実態があります。

 だからこそ、長時間労働を適切に是正していくことが必要です。他人ごとではありません。いつ自分がなってもおかしくない状況にいることを自覚する必要があります。

労働組合があるからこそ守られる

 新たな法律が施行されましたが、これらを有効に活用するためには必ず、労働者のことをしっかり考えてくれる、信頼できる労働者代表 or 会社全体の職員数の過半数が組合員である過半数労働組合が必要です。過半数に満たずとも労働組合が交渉に入る余地はあります。みんなが諦めるのではなく、勝ち取るという意思を持って労働組合に入ることが大切です。労働組合に入っているもしくは、労働組合として交渉の場に参加していたからといって企業(使用者)が嫌がらせや人事異動、解雇などを言ってきても、まず負けることはありません。不当労働行為として、労働組合が闘います。怖がらず、諦めず、自分の権利を大切にしてください。

さいごに

 長々と書いてしまいましたが、今回法改正は本当にチャンスです。ここで頑張らなければわたしたちは何に守られることもなく、疲弊し、そして最悪の場合には命に影響を及ぼします。

 労働組合は企業内だけでなく、地域にもあります。一人で入れる労働組合もあります。一人で加入しても、労働組合には仲間がいっぱいいるので一人で闘う必要はありません。まず、相談してください。必ず力になります。

 

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学習会の様子

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