兵庫労連

兵庫県労働組合総連合(兵庫労連)は「働きがいのある、人間らしい仕事(ディーセントワーク)」の確立、地域経済・雇用・社会保障を守るための活動をしています。〒650-0023 神戸市中央区栄町通3丁目6-7 大栄ビル10F  TEL 078-335-3770 FAX 078-335-3830 rorenhyogo@shinsai.or.jp   “ひとりじゃない”相談するという選択 フリーダイヤル 0120-378-060 相談無料・秘密厳守 月~金12時~18時(土日祝日をのぞく)

生活できるだけの賃金を!

7・29 最賃労働局前座り込み行動

 労働局前での座り込み行動をしました。当日の参加は40名、多くの組織が参加しました。開始前には8月1日に行われる最賃審議会での陳述に必要な資料の提出と、追加署名275筆を提出しました。非常に暑い、日差しの射した日でしたが、木陰に入ると港からの風通しも良かったです。

 各組織から最賃関連での行動や決意表明等を行い、共産党からは金田 峰生さんが応援に駆けつけてくれました。中央最低賃金審議会における目安額が議論される前日の行動でした。今年は3%超えの議論もされるとのことで、シュプレヒコールにも熱が入りました。

本日、中央最賃審議会目安額が発表

 30日に行われた中央最賃審議会で決まった目安額が本日発表されました。今までと違うのは、参院選の争点にもなった、野党共通政策13項目にある最賃1,500円に対する反応と、マスコミがこぞって目安額を伝えたことですかね。

 さて、そんな目安額の発表に前に、最賃制度そもそもに触れておきます。

最低賃金法という法律がある。

 いわゆる、仕事をする上で最低限保障される時間給だと考えてもらえれば良いかと思います。この最低賃金には2種類あり、都道府県ごとに定めた地域別最低賃金と、産業ごとに定めた特定最低賃金です。

 会社は最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならず、満たない給与を支払っていた場合には、不足文は無効となり、最低賃金と同じ金額を支払わなければなりません。

 また、特定最低賃金については、各都道府県が特定の産業を指定し、賃金を決める最低基準であると理解してもらえたら良いかと思います。地域別と特定が同時に適用される会社では、金額の高い方が基準となることも押さえておいてください。

 最低賃金の対象者は、正社員、アルバイト、嘱託の区別なく、すべての労働者に適応されることが原則です。

 地域別とは、その名の通り、各都道府県で最賃の最低額が違います。いわゆる、格差があるということです。また、47都道府県を4つのランクに分け、A~Dの各ランクで最賃目安額の引き上げ額が変わります。

今年はどうなっているのか?

 TVで見た方は既にご存知かもしれませんが、敢えて宣伝を含めて記載しておきます。

 中央最低賃金審議会目安小委員会において2019年度地域最低賃金の目安案を発表

A:28円 B:27円 C:26円 D:26円 となっています。

 この中央の目安案を受けて、地方最低賃金審議会で最賃の引き上げ額が審議されます。東京・神奈川はAランクで28円の引き上げとなっており、今年の改定で1,000円を超えます。兵庫県はBランクに位置していますので、27円の引き上げで898円となっています。昨年、地方最低賃金審議会で+2円程度の増額となって発表されているので、900円に届く可能性はあります。

 ちなみに、Bランクに属する県は、京都・兵庫・静岡・三重・広島・滋賀・栃木・茨城・長野・富山・山梨です。最高の京都で909円、最低の山梨で837円となり、同じBランクでも72円もの差があります。

 全国で考えた場合、1位の東京で1,013円、47位の鹿児島で787円、実に226円も時給に差があります。

あなたの仕事は最賃以上ですか?

 街を歩いていると、店先や電柱などにアルバイト募集の看板が立っていることがあると思います。その賃金、正しいですか?事務所内で話しをしていると、今日、あるチェーン店のアルバイト募集掲示板に、「高校生870円」と記載していたとのこと。兵庫県の現在の最低賃金は871円です。1円低いだけで法律違反です。違法労働です。

 あなたの支払われている賃金は正しいですか?日給や月給でも労働時間や出勤日数を計算すれば支払われている時給が出せます。気をつけてください。実は最低賃金以下で労働していることがあるかもしれません。実際に労働相談を受けていても、実は最賃以下で働いていた、なんてことありますよ。

全国平均901円って凄いのか?

 TVでは全国平均901円になったと大々的に宣伝しています。この平均という言葉にまず騙されないようにしてください。これは加重平均といって、単純平均ではないです。単純平均した場合、約842円です。加重平均とは何か?厚労省のホームページから引用させていただきますが、、、

 企業の賃上げ額を賃上げの影響を受ける常用労働者数を計算に反映させ、1人当たりの平均値を算出する方法をいう。

 ※「単純平均」及び「加重平均」の具体的な計算方法は次のとおり。

 企業A  賃上げ額: 2,000円  常用労働者数: 70人
 企業B  賃上げ額: 1,000円  常用労働者数: 30人

 単純平均:(2,000円+1,000円)÷2企業=1,500円
 加重平均:(2,000円×70人+1,000円×30人)÷(70+30)=1,700円

 企業というのを、各都道府県に置き換えればわかるかと思います。

 単純に全国の最賃を平均すれば低くなる。逆に言えば、加重平均を「全国平均」という言葉で隠せば、見かけ上の最低賃金は高く見せられるということです。

 47都道府県の内で900円を超えている県は、中賃目安額を当てはめても東京・神奈川・大阪・愛知・埼玉・千葉・京都の7府県しかないのです。

全国一律制度の議論について

 今年は、自民党の東京都議連の中にもワーキンググループができ、全労連の黒澤さんが呼ばれて最賃の大幅引き上げや全国一律制度について説明を行っています。都議連は全国一元化という言い方にこだわっていますが・・・

 全国一律制度がなぜ必要なのか?改めて説明したいと思います。全労連で行っている全国最低生計費試算調査なるものがあります。

 食費、住居費、水道・光熱費、家具・家電用品、被服・履物、保健医療、交通・通信教養・娯楽、その他、非消費支出、予備費など細かく支出を計算した上で月額・年額の最低生計費を試算しています。また、その月額を150時間労働、155時間労働、173.8時間労働に換算した場合の時給額を算出しています。また、25歳単身者・賃貸ワンルームマンション(25m2)に居住という条件で試算しています。

 10以上の都道府県で取り組まれていますが、フルタイムで働いたとしても1,300~1,400円、150時間労働であれば1,400~1,600円は必要となることがデータとして出ています。全国どこでも同じです。なぜ同じなのか?

 都市部で生活する場合、家賃を含め物価が高く、公共交通機関が発達している分、移動という面ではほとんどお金がかかりません。しかし、地方になればなるほど、物価は安いが公共交通機関が発達していないため、自動車が必要となり、その維持費がかかります。こういった、都市部と地方の生活の差を考えていくと最終的に月にかかる金額はどこに行っても変わらないということがわかります。

 こういった実状を踏まえ、現在の地域別最低賃金制度は全くもって意味のないものであることが分かります。むしろ、生活をしていくため、実家を支えるために賃金の高い方へ人が流れていき、地方の過疎化が進んでいるのが現状です。これにより、ますます労働者の格差・貧困が広がっていることが分かります。

最賃上がったって関係ない?

 そんなことはありません。正規職員は月額で最賃よりも当然多く給料をもらっていることでしょう。しかし、本当に十分な給料をもらっていますか?労働力という対価を払うほどの賃金になっていますか?

 最低賃金は、「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的」としています。これは最低賃金法の第1条に書いてあります。

 これと同時に、憲法には生存権憲法25条「健康で文化的な、最低限度の生活を営む権利」を国民は有しています。

 今の最低賃金が、労働者の生活の安定に寄与していますか?健康で文化的な、最低限度の生活を送れていますか?労働者の生活が安定するほどに最低賃金が上がれば、当然、正規職員で働いている者の賃金も上がります。民間の給料が上がれば公務員の給料も必然的に上がります。

 自分たちの賃金を上げるためには最低賃金を引き上げることが必要です。会社の経営がいいから職員の給料を上げる、といった構図があるなら、今の低賃金労働は起きていませんし、大企業が内部留保を年々ため込んでいることもないでしょう。

最賃が上がると中小企業が潰れる?

 何もしなければ中小企業の経営を圧迫する、というのは分かります。だからこそ、中小企業支援策の拡充を訴えているということを忘れてはいけません。元々、中小企業支援策のための財源は30億円以上もありました。しかし、ここ数年でどんどん下げられ、現在では7億ほどしかありません。今までの中小企業支援策は企業が使用しにくい、また、条件も厳しく、なんといっても周知が全くできていなかったことが影響していると思います。

 実際に兵庫県の業務改善助成金申請件数も年間40件ほど、交付決定件数はその半数程度に留まっています。そりゃ、中小企業は生き残りをかけて最賃引き上げに反対しますよね・・・

これからの闘い

 まだ、最賃の引き上げが確定しているわけではありません。あくまで引き上げの目安が発表されただけです。ここから、各都道府県の最低賃金審議会で最賃の最終的な引き上げ額が審議されていきます。兵庫県は8月1日に審議会で話し合われ、専門部会が開催されていきます。8月末には引き上げ額が決まる予定となっています。

 審議会の傍聴への申込や参加といった姿勢を見せないと、審議会のメンバーだけで引き上げ額が決められてしまいます。次回審議会では、兵庫労連から意見陳述を。行います。

 現在の政権が行っている政策は、最賃を毎年3%以上引き上げよう。でも、中小企業支援策は縮小しよう。という全くもって反対の政策です。中小企業いじめではないでしょうか。3%程度の引き上げでは生活できる賃金になる頃には生活が成り立たず、労働者いじめではないでしょうか。

 よく調べ、よく知り、そして行動することが求められているのではないでしょうか。

 

★兵庫労連(兵庫県労働組合総連合)
〒650-0023 神戸市中央区栄町通3丁目6-7 大栄ビル10F
TEL:078-335-3770 FAX:078-335-3830
mail adress:rorenhyogo@shinsai.or.jp

★兵庫労連・労働相談センター
“ひとりじゃない” 相談するという選択
0120-378-060 相談無料・秘密厳守
月~金12時~18時(土・日・祝日は休み)